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銀行の法人営業で全国1位を取り続けた尊敬すべき上司の話

2019 12/01
銀行の法人営業で全国1位を取り続けた尊敬すべき上司の話
先輩社員たち 先輩社員たち

Mさんがうちの支店に来るらしいよ

ぼくのいた銀行は全従業員で約9,000名。有名な支店長であれば、話は別ですが、一介の営業マンが全国で名が知られるというケースは稀です。

しかし、自分が配属された支店(以下、A支店)にやってくるMさんは、異動してくる前から、その話題でもちきりになるほどの名前が通った営業のスーパースターでした。

当時の支店は法人営業が8名。いわゆるベテランと呼ばれる人が4名と、若手が4名という構成でした。そして、若手とベテランが2人1組になって、営業成績を争う方法を行なっていました。

当時の自分は、経験もゼロに等しいような若手の中でも1番の年下でした。ですので、ペア間の実力が拮抗するように、実力者のMさんとぼくがペアになることが決まりました。

社会人になってそろそろ7年、銀行をやめて2年間が経とうとしている今でもこの上司との出会いが自分のビジネス人生に大きく影響を与えるものだと思うなんて、このときは思いもよりませんでした。

目次

会社に全くいないMさん

法人営業マンは8時に会社に行き、9時になったらアポがある人は外回りに出て、昼には一度会社に戻る。午後も外回りに出て、18時には会社に戻ってくるということがルールとしてありました。

しかし、Mさんは、8時40分くらいに出社後にすぐに外出し、19時くらいに会社に帰ってきて少し事務作業をして誰よりも早くに退社する、という明らかに他の人と違う行動をしていました。

当時、何も知識のない自分にとって、ペアの先輩社員とほぼ会えずに質問や相談できない状況というのは不安を増加させる大きな要因の1つでした。

そそ そそ

成績残すとルールを守らないで何でもやっていいと思ってるのかな

なんてことも、ぼくは心の奥底で思っていました。

質問や相談もできないので、

そそ そそ

Mさんの外出中についていって道中で聞くしかない!

と思い、Mさんの営業について行くことにしました。

そこで、まずはMさんに日々の行動について聞いてみました。

そそ そそ

なぜ、そんなに会社にいないんですか?他の人はちゃんとルール守ってますよ

スーパー営業マンMさん スーパー営業マンMさん

会社にいるときにしている仕事って何のためにしていることが多い?

考えてみると、会社にいる仕事は社内のための仕事が多いということに気づきました。社内の報告書、上司を説得するための資料作成、回覧資料などなど銀行は特に社内事務作業が多いのです。

スーパー営業マンMさん スーパー営業マンMさん

俺らは営業だから、売上を上げることにつながらない作業はやらないべき

社内業務の中でも唯一の社外に対して行う事務業務とも言えるのが稟議作業です。

「稟議作業」とは

・会社にお金を貸したい」というための文書の作成のこと

・稟議が承認されないと貸付が出来ない

・営業数字を上げるために必須の作業

Mさんは稟議作業すら自分でやらないようにしていました。社内にいる融資課の人に稟議作業を外注し、自分はお客さんとの接点に時間を使っていたのです。

スーパー営業マンMさん スーパー営業マンMさん

営業は数字を上げるのが仕事。数字が上がるのはお客さんからOKをもらう時だけ。

これがMさんの口癖でした。

自分は何のためにいるのか?そのためには何をしなくてはいけないのか?ということを常識やルールに捉われず、考えて行動することの重要性をMさんから学びました。

会社で周囲の人が無意識に行なっていたりすると疑問を持たなくなり、いつしか当たり前のことが出来なくなっていきます。

絶対貸せないと思う会社に貸し付けを行うMさん

Mさんの真髄を見たのは、とある法人に貸し付けを行う時でした。

銀行の法人営業の成績は『いくら貸したか?』が指標となります。銀行の営業の難しさはどんなにお客さんを口説いても『貸しちゃいけない先』が多々あるところです。これは他の業界の営業にはない難しい部分だと思います。

貸し付けを実行する際に、貸出したい会社の財務評価が判定されます。その財務評価をもとに、会社に貸し付けるための稟議が承認され、さらにお客さんからの同意が得られルト、はじめて融資が実行されるというフローになっています。

過去の返済実績やデジタルに判定される財務評価から、ある程度貸せる会社とそうでない会社が区別されます。

ですので、法人営業として成績を残すためには

  1. お金はいらないけど、財務評価が高い会社を説得する
  2. お金がいる会社に貸すために社内を説得する

一般的な銀行員は、①の『お客さんに対して営業する』ということが多いです。なぜならその方が簡単だからです。財務体質が弱い会社に、審査部を説得するなどの社内営業をして貸し付けることはとても難しいのです。

しかし、Mさんは圧倒的に②の案件が多かったのです。

そして、社内の人が「そんな会社潰れるだろう」と思っていた会社に貸し付けをして、しっかり回収して、何年にも渡ってそのお客さんと取引を行なっていく事例がほとんどでした。

先にも述べたが、社内で『貸し付けが難しい』と判断されるときは、決算書の貸借対照表と損益計算書のスコアが良くなかったときです。

しかし、銀行の財務スコアリングは仕組み化されており、実際にその数値が何を示すのか?なぜその数値が低いとだめなのか?を理解して説明できる人は少なかったのです。

財務スコアリングが悪い会社に融資を実行した時の話

ある日、Mさんは昔ながらの婦人服店に新規で貸し付けを行おうとしていました。

Mさんのいつもの案件らしく、その法人の財務評価は到底貸し付けを行えるようなスコアは出ていなませんでした。特に『棚卸し資産』の数字が過大であり、融資を実行するのは危険と判断されていました。

洋服店のような小売店は在庫を持ちすぎていたり、前年と同じ金額の在庫があると、その在庫は資産性がないとみなされ、財務スコアリングが低くなります。

その会社は業界平均の5倍以上も在庫を持っており、それによって借入も増大していました。銀行としてこれ以上の貸し付けは危険という状況にも関わらず、Mさんは新規の銀行として貸し付けを行おうと試みていました。

既存取引のある銀行がやらないのに、新規取引として自分たちは絶対やりたくない、というのが当時のうちの銀行のスタンスでした。

スーパー営業マンMさん スーパー営業マンMさん

余裕で貸せる。めっちゃいい会社だよな

社内で最初に否定的な反応だったにも関わらず、ぼくの横の席でMさんがポツリとそう言ってたのを今でも覚えています。

スーパー営業マンMさん スーパー営業マンMさん

なんで在庫が多いと財務が弱いと判断されるの?

そそ そそ

売れない商品は資産性がないからじゃないんですか?

スーパー営業マンMさん スーパー営業マンMさん

なんで在庫が多いことが、売れないことってなるの?

そそ そそ

だって、前年と同じ商品で同じ金額が決算書にのってたら1年間売れてないことですし、そもそも売上に対して過剰に在庫を持ってたらそういう解釈になるんじゃないんですか?

スーパー営業マンMさん スーパー営業マンMさん

なんで売れない=資産性がないってなるの?

そそ そそ

いやだって、服はシーズンや流行があるので、時間が経てば経つほど価値が下がっていくので・・

スーパー営業マンMさん スーパー営業マンMさん

どんな服でも?

そそ そそ

うーん、たぶん・・・・・・・・

スーパー営業マンMさん スーパー営業マンMさん

そんなことないだろ。この会社が扱ってる洋服って何か知ってるか?

そそ そそ

え、知らないです。

スーパー営業マンMさん スーパー営業マンMさん

ここは高級毛皮を扱ってるんだよ。

スーパー営業マンMさん スーパー営業マンMさん

しかも、ここで扱っている高級毛皮は確かに時間が経つと痛んだりはするが、それ以上に希少性が高いので、ほとんど値崩れしない。現にこの前、仕入れてから6年経った毛皮を某有名人が購入していったよ。

ぼくは決算書の数字という表面的なものしか見ずに、それが意味するものを理解していなかったのだと、Mさんの発言を聞いて痛感しました。そして、洋服は時間が経つにつれ、価値が下がるものという固定観念から、その会社の判断をしてしまっていたことを恥じました。

そのあとで、よくよく調べるとスノーレオパード(雪豹)やウンピョウ(雲豹)という動物の毛皮は非常に希少で、絶滅危惧種と呼ばれています。

そんな毛皮は目にすることすらほぼ無いということがわかりました。他にもカラクールラム、レオパードといった毛皮は価値は高く、値下がりもしづらいとのことでした。

この会社は、集客に力を入れておらず、その価値が分かる購入者と出会うのに時間がかかったり、希少な毛皮を仕入れることに躊躇しないため、結果的に在庫が多くなっているという個別事情がありました。

結果、Mさんはその在庫のもつ意味や、その妥当性を証明することで、銀行内の機械な判断上では、否決だった案件にも関わらず、社内の承認を取ってしまいました。

ぼくは銀行を辞めて数年経つ今でも、この案件を鮮明に覚えています。人との違いを出すには、より深い本質理解と、その状況を変えようとする熱意、そして実行力が大切だということを学んだからです。

Mさんの存在やMさんから学んだことは、今の自分に大きな影響を与えています。

ぼくは常日頃から後輩に対して、「リクルートでしか働けない人になるな」と言っていますが、ぼくのそのメッセージは、Mさんの背中を見て、勝手にぼくが解釈した言葉です。

ぼくも、後輩のビジネス人生にとって大きな影響を与えられるような存在になれるよう、日々精進したいと思って仕事をしています。

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